
ドローンの夜間飛行は「危険」?行政書士が解説する許可条件と安全な運航の秘訣
はじめに:ドローン夜間飛行の可能性と専門家の役割
ドローンによる夜間飛行は、日中では困難な撮影表現や、夜間にしか行えない施設の点検、さらには防犯パトロールといった新たな業務活用を可能にします。その幻想的な映像美だけでなく、ビジネスにおけるその可能性に多くの企業担当者が注目していることでしょう。
しかし、航空法上、ドローンの夜間飛行は原則として禁止されており、国土交通大臣の許可・承認なしには実施できません。この規制を正しく理解し、安全に運用するためには、専門的な知識が不可欠です。
本記事では、ドローン飛行の許認可申請を専門とする行政書士が、夜間飛行が許可されるための法的要件、申請プロセス、そして実務上の重要な注意点について、企業の皆様やドローン関連法規にご関心のある方々が正確かつ分かりやすく理解できるよう解説します。
この記事を読めば、以下の点が明確になります。
- ドローン夜間飛行の法的な定義と原則禁止の理由
- 夜間飛行を許可されるための具体的な条件と安全対策
- 包括申請と個別申請の違い、それぞれの適用範囲
- 「マニュアル遵守」がなぜ重要なのか、違反した場合のリスク
- DID地区や目視外での夜間飛行における特別な注意点
これから夜間飛行を検討している企業担当者の方、または現在の運航方法に不安を感じている方にとって、この記事が安全で合法的なドローン活用への羅針盤となることをお約束します。
1.ドローン夜間飛行の法的根拠と定義
1-1. 航空法における夜間飛行の定義
航空法第132条の2において、無人航空機の飛行は日中が原則とされており、夜間飛行は禁止されています。
ここでいう「夜間」とは、具体的に**「日没から日の出までの間」**を指します。
この時間は季節や地域によって変動するため、実際に飛行する際には気象庁が発表する日出没時刻を必ず確認し、厳密に遵守する必要があります。
1-2. なぜ夜間飛行は「原則禁止」なのか?その理由と承認で認められる根拠
ドローンの夜間飛行が原則として禁止される主な理由は、視界不良による事故リスクの格段な増加にあります。
暗闇では、電線や樹木、建物といった障害物の発見が遅れ、機体の姿勢や正確な位置の把握も困難になります。
これにより、衝突や墜落といった重大事故に繋がりかねません。
しかし、航空法第132条の2第2項により、国土交通大臣の許可・承認を得ることで、例外的に夜間飛行が可能となります。
これは、単に「飛ばしたい」という個人の要望ではなく、適切な安全対策と操縦者の高度な技量が確保され、その公共性や業務における必要性が認められる場合に限り、安全が担保されると判断されるためです。
高性能な灯火の装備、補助者の配置、綿密な飛行計画、そして十分な夜間飛行経験といった厳格な条件をクリアすることで、夜間ならではの有用な飛行が可能となります。
1-3. 夜間飛行許可の区分:特定飛行としての位置づけと申請の種類
夜間飛行は、航空法が定める**「特定飛行」**の一つです。特定飛行には他にも、人口集中地区(DID地区)での飛行、目視外飛行、人や家屋が密集する地域での飛行などが含まれます。複数の特定飛行に該当する場合でも、それらをまとめて許可申請することができます。
他にも特定飛行はあるの?特定飛行の詳しい解説はこちら👇
特定飛行の許可申請には、大きく分けて以下の2種類があります。
- 個別申請: 一度限りの飛行や、特定の場所・日時での飛行に対して許可を得る方法です。
- 包括申請: 同一の操縦者が同一の機体を用いて、反復して類似の条件下で特定飛行を行う場合に、最長1年間の許可・承認を一括で取得できる制度です。夜間飛行においても包括申請は可能であり、業務の効率化に大きく貢献します。
包括申請許可承認申請方法はこちらの解説をご確認ください👇
個別申請許可承認申請方法はこちらの解説をご確認ください👇
2.包括申請で夜間飛行が許可される条件と「飛行マニュアル遵守」の重要性
夜間飛行で包括申請の許可を得るためには、国土交通省が定める厳格な条件を満たす必要があります。特に重要なのが、申請時に提出する**「飛行マニュアル」の遵守**です。
2-1. 包括申請における夜間飛行の条件(標準飛行マニュアル②の適用)
多くの方が包括申請で利用する**国土交通省航空局標準マニュアル②(場所を特定しない申請について適用)**には、夜間飛行に関する具体的な安全手順や判断基準が盛り込まれています。
これらを厳格に遵守することが、許可取得の前提条件となります。
包括申請における夜間飛行の主な許可条件は以下の通りです。
- 夜間飛行の操作安定性: 夜間においても、飛行マニュアルに掲げる操作(離着陸、ホバリング、旋回など)が安定して行えるよう、十分な練習を行っていること。
- DID地区での夜間飛行の制限: 人または家屋が密集している地域(DID地区)の上空では夜間飛行を行わないこと。
- 夜間での目視外飛行の制限: 夜間における目視外飛行は行わないこと。
- 機体の視認性確保: 夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる十分な光量の灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定すること。
- 事前確認の徹底: 日中、飛行させようとする経路とその周辺の障害物などを事前に確認し、適切な飛行経路を選定すること。
- 操縦者の限定: 操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限ること。
- 補助者の理解: 補助者についても、飛行させている無人航空機の特性や夜間飛行のリスクを十分に理解させておくこと。
- 離発着場所の照明確保: 夜間の離発着場所において、車のヘッドライトや撮影用照明機材などで機体離発着場所に十分な照明を確保すること。
これらの条件は、包括申請において夜間飛行が許可される際の基本的なルールとなります。
2-2. 「飛行マニュアル遵守」の絶対的な重要性
無人航空機の飛行に係る許可・承認書には、「申請書に記載した飛行マニュアルを遵守して飛行させること」という条件が必ず明記されています。
これは単なる注意書きではありません。
この文言は、許可・承認されたドローン飛行の安全性を担保する最も重要な柱であり、違反した場合には航空法違反として罰則の対象となる可能性もある、極めて重要な注意事項なのです。
国土交通省は、あなたが提出した飛行マニュアルの内容に基づき、「この計画とマニュアル通りに飛行すれば安全が確保される」と判断して許可を出します。
したがって、許可された範囲内で安全に飛行するためには、提出したマニュアルの内容を厳格に守ることが不可欠です。
マニュアルには、飛行前点検、離着陸手順、監視体制、緊急時の対応、気象条件の判断基準など、安全飛行のための具体的な手順が盛り込まれています。
これを遵守することで、事故のリスクを最小限に抑え、万が一の事態にも適切に対応できるようになります。
この機会に飛行マニュアルについて詳しく知りたい方はこちらの解説をご覧ください👇
2-3. 飛行マニュアルを遵守しないことのリスク
もし、許可・承認書に記載されたマニュアルを遵守せずに飛行した場合、以下のような重大なリスクが伴います。
- 航空法違反による罰則: 許可条件の違反は航空法違反となり、罰金などの対象となる可能性があります。
- 事故発生リスクの増大: マニュアルは安全のために策定されています。これを無視した飛行は、操作ミスや状況判断の誤りを招き、墜落や衝突事故につながる可能性が高まります。
- 保険適用外の可能性: 事故が発生した場合、ドローン保険の適用を受けるためには、許可・承認条件や飛行マニュアルを遵守した飛行であることが条件となることがほとんどです。マニュアル違反が判明した場合、保険金に影響する可能性もあります。
- 社会的な信頼の失墜: 事故は、企業としての信頼を大きく損なうだけでなく、ドローン業界全体のイメージダウンにも繋がりかねません。
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3.DID地区夜間飛行・夜間目視外飛行は「個別申請」が原則
前述の通り、包括申請ではDID地区での夜間飛行や夜間における目視外飛行は行えません。
これらの組み合わせは、その危険性の高さから、原則として包括申請では許可されず、個別の飛行ごとに申請する「個別申請」が求められます。
国土交通省が何よりも「安全」を最優先しているため、これらの高リスクな飛行については、より厳格な審査が行われます。
3-1. DID地区での夜間飛行が個別申請になる理由
人口集中地区(DID地区)は、多くの人が生活し、建物が密集しているエリアです。
夜間におけるDID地区でのドローン飛行は、以下のような理由から特に危険性が高まります。
- 視界不良によるリスク増大: 暗闇では、電線、建物の突起物、樹木などの障害物が視認しにくく、機体の姿勢灯だけでは、距離感や相対的な位置関係を正確に把握するのが困難になります。
- 被害拡大のリスク: 人口が密集している場所での墜落は、人身事故や物的損害に直結する可能性が非常に高く、夜間は人々の行動パターンも異なるため、予期せぬ場所での人との接触リスクも考慮されます。
- 緊急時の対応困難: 夜間における事故発生時、周囲の状況把握や救助活動、二次災害の防止が昼間よりも困難になります。
こうした高いリスクを鑑み、DID地区での夜間飛行は、場所や日時を特定し、その都度、**具体的な安全対策(補助者の増員、綿密な飛行ルートの計画、緊急時対応計画など)**を詳細に審査する必要があるため、包括申請の対象外とされています。
3-2. 夜間における目視外飛行が個別申請になる理由
目視外飛行とは、操縦者がドローンを直接肉眼で確認できない状態で飛行させることを指します(例:FPVゴーグルを使用した飛行、遠距離飛行など)。この目視外飛行と夜間飛行が組み合わさると、危険性はさらに増します。
- 状況把握の困難さの増幅: 目視外飛行自体が機体周辺の状況把握を困難にしますが、これに夜間の視界不良が加わることで、突発的な風の変化、鳥などの接近、未確認の障害物との衝突など、予期せぬ事態への対応が極めて難しくなります。
- 緊急時の判断遅延: 緊急事態が発生した際に、状況を瞬時に判断し、適切な対応をとることが困難になります。機体の状態を示す計器情報だけに頼ることになり、リアルタイムでの視覚情報が得られないことが致命的となる可能性があります。
- 補助者の限界: 通常の目視外飛行では補助者が機体を監視しますが、夜間では補助者であっても、目視による機体監視は非常に限定的になります。
こうした複合的な危険性から、夜間の目視外飛行は個別申請が必須とされています。
4.個別申請でDID地区夜間飛行・夜間目視外飛行を許可されるための条件
DID地区での夜間飛行や夜間における目視外飛行を行う際には、個別申請が必要となります。この場合も、提出する飛行マニュアルの内容が重要になります。
4-1. 個別申請における夜間飛行の条件(標準飛行マニュアル①の適用)
個別申請で多くの方が利用する**国土交通省航空局標準マニュアル①(場所を特定した申請について適用)**では、夜間飛行に関する以下の条件が盛り込まれています。
- 夜間飛行の操作安定性: 夜間においても、飛行マニュアルに掲げる操作が安定して行えるよう、十分な練習を行うこと。
- 機体の視認性確保: 夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定すること。
- 事前確認の徹底: 日中、飛行させようとする経路とその周辺の障害物などを事前に確認し、適切な飛行経路を選定すること。
- 操縦者の限定: 操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限ること。
- 補助者の理解: 補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分に理解させておくこと。
- 離発着場所の照明確保: 夜間の離発着場所において、車のヘッドライトや撮影用照明機材などで機体離発着場所に十分な照明を確保すること。
ご覧の通り、標準マニュアル①においても、夜間における目視外飛行は実施せず、という条件が含まれています。
4-2. 夜間における目視外飛行を個別申請で許可されるための「独自飛行マニュアル」
標準飛行マニュアルを適用できない、夜間における目視外飛行を業務として行う場合は、「独自の飛行マニュアル」の作成が必要不可欠です。
このマニュアルでは、標準飛行マニュアルの「夜間飛行においては目視外飛行は実施せず」という文言を削除し、その代替として、機体の視認性確保をより補っていくことが必要とまります。
具体的には、以下のような項目を充実させることで、許可・承認を取得できる可能性が高まります。
- 補助者による安全対策の強化: 目視外飛行を補完するための、複数の補助者配置、高性能な監視機器(サーマルカメラなど)の使用、異常時の連携方法など。
- 経路逸脱時の対策: GPS信号喪失や操縦不能時の自動帰還設定、予め設定された緊急着陸地点への誘導、経路逸脱検知システムの導入など。
- 操縦者への不測の連絡方法: 万が一、操縦者と補助者間の無線通信が途絶した場合の代替連絡手段(事前に決めた合図など)。
- 不具合発生時の機体安全対策: モーター故障、バッテリー異常などの不具合発生時に、第三者への被害を最小限に抑えながら安全に着陸させるための手順や技術。
- 各現場におけるリスクアセスメントの徹底: 飛行経路、周囲の環境、気象条件など、個別の飛行ごとに詳細なリスク評価を行い、そのリスクに応じた具体的な安全対策を講じる計画。
個別申請では、飛行経路の特定はもちろんのこと、夜間かつ目視外という条件下での具体的なリスクアセスメント、それを補うための独自の飛行マニュアル作成、高度な操縦技量の証明、そして厳重な補助体制などがより厳しく問われます。
行政書士は、これらの複雑な要件を満たすためのマニュアル作成を支援し、適切な申請をサポートします。
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5.夜間飛行における実務上の注意点とリスクマネジメント
許可を得たからといって、無条件に夜間飛行が安全にできるわけではありません。実務においては、以下の点に特に注意が必要です。
5-1. 事前準備の徹底
- 気象条件の確認: 夜間は、気温の低下、霧、露など、日中とは異なる気象変化が起こりやすいです。風速、視程(見通し)など、夜間飛行に適した気象条件であることを必ず確認してください。
- 現場の徹底的な下見: 夜間飛行前に、必ず日中に飛行場所の下見を行い、障害物(電線、樹木、建物など)の位置、地上の明かりの状況、緊急着陸場所などを入念に確認してください。夜間は昼間とは全く異なる視界となるため、これが非常に重要です。
- バッテリー管理: 低温下ではバッテリー性能が低下しやすいため、予備バッテリーの準備や保温対策が必要です。
- 照明器具の準備: ドローン本体の灯火に加え、補助者のためのヘッドライトや、現場を照らすための補助照明なども準備しましょう。
5-2. 飛行中の安全管理
- 常に目視できる範囲での飛行: 原則として、ドローンは操縦者から常に見える範囲で飛行させなければなりません。夜間は特にこの「目視」の確保が難しいため、補助者との連携や灯火の活用が不可欠です。
- 周囲への配慮: 夜間は音が響きやすく、照明も目立ちやすいため、近隣住民や通行人への配慮を怠らないでください。事前に告知を行うなど、トラブルを未然に防ぐ工夫が必要です。
- 緊急時の対応訓練: 万が一のトラブルに備え、緊急時の対応手順(機体の不具合、バッテリー切れ、第三者の侵入など)を事前にシミュレーションし、訓練しておくことが重要です。
5-3. リスクマネジメントと保険
- 対人・対物賠償責任保険への加入: 予期せぬ事故に備え、ドローン保険(対人・対物賠償責任保険)に加入してください。夜間飛行はリスクが高まるため、補償内容を検討することをお勧めします。
- 事故発生時の報告義務: 事故が発生した場合は、速やかに国土交通省への報告義務があります。負傷者がいる場合は、救護活動を最優先し、警察・消防にも連絡してください。
まとめ
ドローンの夜間飛行は、業務活用の可能性を大きく広げる一方で、航空法による厳格な規制と高い安全性が求められる分野です。特に、DID地区での夜間飛行や夜間における目視外飛行は、そのリスクの高さから包括申請の対象外とされ、個別の申請と特別な安全対策、そして独自の飛行マニュアルの作成が必要となります。
許可・承認書に明記される「マニュアル遵守」は、安全なドローン運航のための絶対条件であり、これを怠ることは法令違反や重大な事故につながる可能性があります。
ドローンを安全かつ合法的に業務に活用するためには、航空法や関連規則を正確に理解し、適切な申請手続きを行うことが不可欠です。
複雑な申請要件やマニュアル作成でお困りの際は、行政書士のような専門家にご相談ください。
私たちは、皆様がドローンを最大限に活用し、ビジネスを成功させるためのサポートをさせていただきます。
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